快適で安全な登山を楽しむために。
自然への負担をできるだけかけないために。
登山の前にぜひ知っておいて頂きたい、どれも大切なお願いです。
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危険の多い箇所があります。自分の行き先にどんなリスクがあるのかを知っておきましょう。
登山には「自然の中に足を踏み入れることで、冒険的な楽しみを得る」という面があります。
北アルプスは、槍・穂高連峰をはじめとして、日本の山岳の中でも特に急峻で事故の多い場所を含んでいます。
転滑落や、時期によっては低体温症などで、命に関わる場合も。
安全で楽しい登山になるために、どこでどんな危険性があるのかを知っておきましょう。 -
北アルプス登山は必ず早出早着!無理のない計画を立てましょう。
午後は霧や雷の発生率が高くなります。また、トラブル時の救助が日没後は出来ず、一晩を越さなくてはならないなど、命に関わるリスクが高くなります。行動予定時間に応じて、出来るだけ早く出発し、目的地には午後早くに到着しましょう。
予想外の時間超過となった場合、山中ではどうにもならないことがあります。
山小屋へは15時頃までに着くよう計画し、遅くとも16時には着くようにしてください。
朝早い出発のために、山小屋や登山者のための宿では、朝は5時頃から朝食を提供したり、夜のうちにお弁当をお渡ししたりしています。
長時間の登山行動をする場合、この山域では、日の出ごろには出発をするのが一般的です。 -
登山届を出しましょう。保険には入っていますか?
万が一の際、どこを探していいのかわからない…。そんなことを防ぐために、登山届を出しましょう。
登山届は登山口の専用ポストへ入れるか、登山口を管轄する警察署へ提出して下さい。
日本山岳ガイド協会が提供するインターネット登山計画作成・登山届提出サイト「リンク」の利用も便利です。
ご家族やご友人に計画書を渡しておくのも大切です。
捜索費用や賠償費用のついた1日からの山岳対応保険は、無雪期ならば携帯会社のものなどに安く簡単に入れます。
年間では、山岳専門、救助費用専門のものもあるので、この機会に検討を。 -
正確な地図を携行しましょう。
概念図のようなものだけを持って山に入るのは危険です。
図では描かれない危険箇所などがわかりませんし、正しい長さを示していないからです。
正確な地図であれば距離も正しく、また等高線で道の様子を想定できます。
昭文社「山と高原地図」、山と渓谷社「読図ができる登山地図」シリーズなどの登山地図もおすすめです。
(登山道を明示してあり、危険箇所や水場、標準コースタイムなども記載してあり、頼れるでしょう)。
現在地がわからなくなった場合に備えてコンパスも携行を。事前に使い方を学んでおきましょう。
GPSは、専用機器では信頼性が高いですが、携帯などは電池の消耗が激しく、地図も多くの場合山岳に対応していません。 -
時期と標高によって、必要な装備は変わります。
高地では気温低下に十分備えて下さい。標高3000mでは、夏でも、夜は都会の冬と同じ寒さです。
雨具は絶対に必要です。高い標高のところでは上下別の雨具を。ポンチョ(ワンピースタイプ)では風で吹き上げられてしまい、意味がないどころか逆に危険です。
積雪期は、装備がしっかりしていても、それを正しく使えるかが重要。
また、逆にひとつでも装備を忘れてしまうと、命取りになります。当ページでも情報を掲載しています。 -
気象情報をこまめに確認し、計画を柔軟に。
気象状況によって、登山道の困難さは大きく変化する事があります。
計画は状況に対応して変更できるよう、柔軟なものにしておきましょう。
また、できるだけこまめに気象情報を確認しましょう。
周囲の天気予報だけでなく、気圧配置等から山地の状況が予測できると良いですが、出来ない場合は山岳対応の有料気象情報サービスなどの利用がおすすめです。 -
山小屋はシーズンオフには閉鎖します。
山小屋によっては、開設期間が短いところもあります。よく確認して下さい。
当ページでも情報を掲載しています。 -
お子様連れは、慎重に。
長時間の歩行やキャンプ、標高の高い場所への登山……。
さまざまな経験をさせてあげたいお父さん、お母さんが、登山を選んでくださったことはとても嬉しいです。
しかし、万が一何かあったときの対処は、標高が高く、奥地へ行くほど困難になります。
何かあってからでは、取り返しがつきません。無理は絶対にしないでください。
基本的には、就学年齢に満たないお子様は、「中腹の小屋」まででも困難です。
それ以降のお子様でも、不調を正確に訴えられない、コースタイムが長く必要で時間差も大きいなど、大人だけのグループに比べて、リーダーの状況判断が数倍困難だということをご認識の上、無理のないプランで山歩きを楽しんでくだされば幸いです。
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山小屋には、消灯時間があります。夕食後はお静かに。
消灯時間は、宿によって異なりますが、およそ午後8時〜9時ごろです。
「安全登山のためのお願い」で説明しているとおり、北アルプスの登山では早朝の出発が一般的です。
夜のうちにお弁当を受け取り、日の出前から歩き始める人もいます。
翌日に疲れを残さないため、また、早くから行動する他の登山者の皆さんのためにも、夕食後はなるべく静かに過ごし、消灯時間には就寝しましょう。 -
早朝出発の方は、前夜に準備をすませます。
早くから行動することはとても良いことです。同室にまだ休んでいる人がいる場合もあるので、前夜に準備はすませ、朝に出発する際は、なるべく音や動きを増やさないようにしましょう。
とくにレジ袋などのガサガサ音、熊鈴の音などは鳴らないように気をつけましょう。 -
限られたスペースで、お互いに快適に過ごせるようご配慮ください。
山小屋では、基本的に相部屋をお願いしていたり、共用スペースにも限りがあったりします。
同じように山を楽しむ仲間として、お互いに快適に過ごせるよう、部屋などでの過ごし方にはぜひご配慮ください。 -
水や電気は「貴重品」です。
山中では水道や電気は通っておらず、それぞれの小屋が貯水や自家発電等で対応している場合が多いものです。
水や電気は、山の中では貴重なものだと認識していただければ幸いです。
また、トイレはとくに維持管理が大変なため、利用料負担をお願いしている場合があります。ご協力ください。 -
火気の使用は、指定された場所で。
山小屋では、お手持ちの器具で湯沸かしや調理を行う事もあるかと思います。山小屋は木造など、火事に弱い事がほとんど。
過去には、登山者の方の不注意によって大きな失火があったこともあります。
必ず、指定された場所での使用をお願いします。
喫煙についても、指定された場所で行い、混雑時等は周囲へのご配慮をお願いします。
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山の中では決められた道を歩きます。
道脇の草原へ入ったり、花の上に乗ったりしないようにお願いします。貴重な高山植物を荒らしてしまうのにくわえて、踏み跡から雨が浸潤し、登山道を崩すことにもつながります。
ストック使用の際は、無雪期はキャップをつけて。 -
高山植物は採らないで。
北アルプスは、そのほとんどが、中部山岳国立公園内特別保護地区または特別地域となっており、植物の採取および、昆虫、動物を捕まえることも禁じられています。
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余った食料やゴミは残さずお持ち帰り下さい。もちろんタバコの吸い殻も。
近年、野生動物たちの行動範囲がどんどん広まっているようです。
人間の持ち込んだ食料につられてなわばりを広げた動物達は、高山植物を食べてしまうなどの害獣となっています。
気持ちの良い山の美観を損ねないためにも、ほんのささいなゴミや食べ物も正しく処理してください。
基本は、「自分が持ち込んだものは、すべて家まで持ち帰り」です。 -
テントは指定地に張って下さい。
ほとんどの場合、山小屋がテント場管理者となっており、幕営可能場所を指示いたします。
緊急時以外の指定地外での幕営は禁じられています。 -
稜線の小屋の水は貴重品ですから大切に、また水場は汚さないように。
日本で暮らしていると、水はあって当たり前。
しかし、稜線ではほとんどの場所で天水(雨水)しか利用できず、大変貴重なのです。
それぞれの山小屋が工夫をこらして、少ない水しかない環境でも快適に泊まって頂けるようにしています。 -
山の中でのたき火は厳禁です。山小屋での火気使用も許可された場所で、火の始末は確実に。
過去には、登山者の方の不注意によって大きな山小屋の失火があったことも。
山中でのたき火は大規模な森林火災を招き、大変危険です。
また、テント内での火気使用による失火、一酸化炭素中毒も気をつけましょう。 -
野生動物に餌を与えないで下さい。またペットは持ち込まないで下さい。
近年、野生動物たちの行動範囲が広まっている理由には、余った食料ゴミのほか、人為的に餌を与える人がいることもあるようです。
餌付けに慣れてしまった動物は、自力で餌を取れなくなることも。
ペットの持ち込みも、野生動物への悪影響があるため、おやめください。 -
勝手に道標を立てたり、落書きをしたりしないで下さい。
これは安全面にも関わります。登山道整備は許可された者が行っています。
道標や印の明らかな間違いを見つけた場合、最寄りの山小屋へご報告いただければありがたいです。